L28のオーバーホール依頼の理由のほとんどが、オイルの過剰消費です。
L型に限ったことではないですが、旧車やレトロカーと呼ばれる車のエンジンやミッションは東南アジアにかなりの数が輸出されてしまい、国内に残っている絶対数がどんどん減ってしまっています。
約20年前はどこの解体屋にもL型エンジンを搭載した車種が残っていてエンジンも安ければ1万、どんなに高くても4万円くらいでした。最近は某オークションでは、L28ノーマル実働だと普通に15万、エキサイティングな展開になると25万近くまで値段が付くそうです。
ベースエンジンが値上がりを続ける時代ですからこれからは「後を考えたチューニング」も考えていかないといけないような気がします。
今回の内容はL28改28ですが、昔ながらのショートストローク仕様ではなくL28クランクにL28コンロッドを使用したオーバーホールの延長みたいな仕様です。 お決まりのように89φにボーリングしてしまうのもいいのですが掘ってしまったシリンダーは元には戻せませんので使用目的によってはノーマルボアを生かしたモディファイも視野に入れて限りあるL型エンジンを楽しむのもいいかと思います。
まずはベースエンジンをバラしていきます
画質が悪くてすみません。。
ヘッドもシャコ万改バルブスプリングコンプレッサーで分解。
オイル消費が激しかったためしょっちゅうオイルを注ぎ足したり交換していたようで結構綺麗です!
今回はバルブガイドの交換もするのでヘッドを温めてガイドを抜きます。
加工屋さんに出す前にバルブのカーボン落としや洗浄はしっかりとやって、各パーツの状態を確認しておきます。 加工後に使用限度を超えてしまっていたりすると加工代をドブに捨てるような事になります。
インテークポートの研磨をしてこの位に洗っておけば加工屋さんも嫌がりません。加工後は切り子と油が付いて帰ってくるので本番の洗浄は組み付け前にしつこいくらいに洗います。
シリンダーブロックの方はと言いますと、まずウォータージャケットのメクラを外します。 普通?はマイナスドライバーでフチを叩いてプライヤーでグリグリしながら抜く方が多いかと思いますが当店ではやりません。
このメクラの裏にはシリンダーボアがありドライバーをハンマーで叩いた勢いでマイナスドライバーが突き抜けてシリンダーボアを変形させたり突き破ったりしたら目も当てれません。 また、圧入で入っているメクラをグリグリしたら穴に傷が付き新しいメクラを入れる際に圧入シロが減ってエンジンに熱が入った時に水漏れしたり抜けてきたりする事もあります。
なのでドリルにストッパーを付けてメクラに穴をあけてスライディングハンマーで抜いています。
次にブロックの前後にあるオイル通路のメクラを外します。
下穴をあけてM8のタップを立ててアイボルトをねじ込みます。 同じくスライディングハンマーで引き抜きます。
裏側にもありますので同様に。
ここまでやってから洗浄して各部の計測、チェックを済ませて加工屋さんに出します。
今回の仕様は排気量はL28のままで、L28純正サイズの86φ鍛造ピストンにL28コンロッドをブッシュ入りフルフロー、クランク曲がり修正、1本キー、当店オリジナル75度9.7mmリフトカム、オリジナルバルブスプリング、リテーナーSETといった内容です。 シリンダーの変形が少ないのであれば定番の89φピストンを使うよりボーリング代が要らないので良いかと思います。 競技でトップクラスを狙うのであれば話は別ですが、楽しみでサーキットを走ったりストリートではパワーも十分ですしシートに押しつけられるような加速も味わえます!!
安易に3.0や3.1にしてしまうよりブロックの寿命も延びますしよほどの方でないと28だとは分からないような乗り味になるのでかなりお薦めです!!
各部品が加工から帰ってきたら仕上がりのチェックをして組んでいきます。
しっかりと洗いなおしてピストンリングのリング合わせをしてからクランクを組みます。
ピストンとコンロッドを合体させて
ピストンピンのCクリップがきちんと嵌まっているかなど何度も確認します。
リングを組んだら組み付けペースト塗ってシリンダーに組んでいきます。
バルブのフェイス研磨とシートカットをしてるので当たりを見ながらすり合わせをして
狙った容積になっているか?1番から6番までのバラつきはどうか等を確認していきます。
今回はノーマルバルブにハイリフトカムを組むのでフェイス研磨やシートカットの加工にはバルブステムの突き出し量を含めてかなり細かい指示で依頼しました。 基本的にはノーマルバルブ仕様だとカムリフトで9mm〜9.2mmが限界と言われていますがロングバルブやビッグバルブを使用しなくてもハイリフトカムが組めるような寸法にしています
スプリングリテーナーからステムシールまで17mmありますので単純にバルブリフト15mmまで組めるという事になります。 ここ最近のフルチューンで使用されているハイパワーを狙ったカムでもヘッド的には楽々組める寸法です。
仮組みを重ねてスプリングのセット長を合わせてからステムシールを組んで本組みします。
上死点を出したらヘッドを載せます。
チェーンガイドのボルトサイズアップをし、面研量が多いので溶接で延長してチェーンのラインを調整しています。
まずはカムとチップの当たりを見ながらロッカーガイドの選定をします。各部の寸法から電卓で計算すればガイドの厚みは選定出来るのですが、最終的にはチップとのアタリや脱落、接触してはいけない部分への接触が無いか等を細かくチェックしていきます。ここを適当に組むと新品のカムが一瞬で傷だらけになります。
バルタイはロッカーアームを12ヶ所に組んで温間時のタペットクリアランスにして計測、調整していきます。
オイルパンを着けて完成。
ヘッドカバーはエンジンを車体に載せる時に傷付いてもいいカバーをつけてます。 時代を感じるステッカーは気にしないでください。。。
ちなみにF54ブロックにP90ヘッドですが86mmボアでいくなら一般的に言うようなN42じゃないと強度が・・・みたいな事はまったく当てはまりません。むしろF54の方が水回り等では優れていてストリートユースには向いていると思います。何が何でもN42、しかもマニアブロック等と言う考えは当店では無く、目の前にあるベースを使用目的に合わせて仕上げていくのがベストだと思います。参考までに当店デモカーのS30はN42マニアブロックをF54ブロックと同じ水の流れになるように水周りを改造して使っています。
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